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魚屋と野良猫

三崎の魚屋は人でいっぱい
週末なんかは居場所もない
でも、みんな嬉しそう

魚屋の兄ちゃんは道端で寝ててもほっといてくれる
おっちゃんは余ったイワシをくれたりする
お客さんはかゆい頭を撫でてくれたりする

面倒なのは面倒くさい
面倒くさいのは面倒
それが野良猫さ

もうすぐ陽も暮れる
海がオレンジになってきた
風もしっとり
ぼやぼやした外灯
人もまばら

ああ、腹へった
眠いけど腹へった
ぼくらは魚屋が好き
ぼくらは三崎が好き

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三崎の「ヶ」の日

三崎の下町は、お祭りなどの「ハレ」の日も盛り上がっていいが、日常の「ケ」の日も実に雰囲気があっていい。

人がまばらで寂しく思うかも知れないが、ゆるい空気のおかげか人の生活が見えやすく、かえって僕には都合が良かったりする。
ある日、港町の夜を照らす小さな灯りの下、潮の香りを肴に酒を飲んでいると、道端では呑気な猫がごろんごろんとひっくり返っていた。
そんな猫を横目にお店の外でお客さんと気さくに話す店主。
何気ないんだけど、ちょっとどこか懐かしい光景が自然に目に入ってくるのも三崎の魅力なのだろう。

ほろ酔いに更けていると、偶然通りかかった散歩中の犬が尻尾を振って近づいてきた。
なんとも嬉しそうな顔を見ていると、もう一杯! と言わずにはいられなかった。

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三崎朝景

はじめまして、写真家の有高唯之です。
今回から、写真連載「三浦百景」を始めることとなりました。まずは簡単に自己紹介をします。写真家として雑誌や広告、CDジャケット、WEBメディアなどで、ミュージシャンや俳優、映画監督、作家、企業の社長など人物写真を中心に仕事をしていて、ライフワークとして世界中の皆既日食を撮影したり、酒好きが高じて、写真エッセイ本『コの字酒場はワンダーランド』(六耀社)を友人の著者と上梓したりもしています。

東京には20年以上、下北沢や中目黒など便利なところに住んでいましたが、偶然3年程前に逗子の眺めのいい古い戸建の家を見つけ、冷やかし程度で内見に行ったところ、思いのほか気に入ってしまい勢い余って拠点を移しました。転勤族だったこともあり見知らぬ土地にはそんなに抵抗はなかったのですが、大人になってからの移住は今までの仕事や家族、遊びなど、不安がないとはいえないのは確かでした。

僕は見知らぬ土地に来ると、猫好きな性分なのか街を見渡せる高いところに行きたくなってしまいます。街を見下ろして見ると、三浦半島の最南端に位置して、漁港もあって、朝市が毎週ある場所などいてもたってもいられません。そこでたまたま訪れた三崎の下町にある、うつわとくらし solの菊田くんと家が近所だったこともあって意気投合し、この連載に誘ってくれたonTheHammockのお二人や、食彩ネットワークのメンバーとも知り合うきっかけとなったのです。

三崎は知ってのとおり、三浦半島の最南端にあり、電車も途中までしかないので不便ではあるけど、そういった場所には独特な文化があるように感じます。10年ほど前に撮影で訪れたロングアイランドのモントークという港町は、マンハッタンから3時間ほどの半島の最東端にある不便なところですが、アンディ・ウォーホールが住んでいたことで、ミック・ジャガーが訪れて曲を作ったり、写真家のリチャード・アヴェドンやブルース・ウェーバーなど多くのアーティストが住んでいる場所でありました。

半島の途中には高級なショッピング街などがある住宅地でしたが、モントークにはそのようなものはなく、森の中にオイスターポンドがあって、可愛いバンビが顔を出したりと、自然と共生したものがそこにあったことでその場所に惹かれたのではないでしょうか。どこか、三崎と共通するところがあるかもしれませんね。

写真は三崎からの朝景。
明るい陽射しが照らす斜面からは天気がいいと房総や伊豆、富士山も見渡せる。普段生活していると見過ごしてしまいそうな三浦のエッヂな魅力を、よそ者の自分が少しづつ探していけたらと思っています。