三崎の街について書く前に、ひとつだけ説明しておかなければならないことがある。
それは三崎人の気質、である。
一言でいえば「お気楽」。
もっと具体的に言うならば「ラテン系」である。
大きな声で、ガラの悪い「三崎弁」を叫んでいる彼ら。実は非常にお気楽で、気のいい人間たちなのである。細かいことでは全く悩まない。
「難しいことなんか、気にしらっさんな。世の中はよ、なるようにしか、なんねぇだよ」
全てにおいて「ケ・セラ・セラ」なのである。
そんな空気を感じてか、一人の男が三崎にやって来た。
朝倉久さん。通称ドン・パンチョ。通称とはいっても、れっきとしたメキシコ政府公認の称号である。そう、彼の話を書くときは「メヒコ」と表記しなければいけない。以前からメヒコと日本の交流に尽力してきた彼が、心底惚れ込んだ酒「メスカル」を引っ提げて三崎にやって来たのは二年前。
「この街の空気、そして人・・・全てが私の長年求めていたものだった。だからこの街で日本初、いや世界初のメスカル&テキーラの専門店をやりたい」こうして誕生したのが「ラ・クェンタ」である。
店について語る前に、簡単にメスカルとテキーラについて説明しよう。どちらも原料となるのは「リュウゼツラン」(マゲイ)これを蒸留して出来た酒である。しかし現代においてテキーラの大半は大手企業で大量生産されているのに対して。メスカルは「家内労務」。いわば「手作りの味」である。テキーラが生産性を重視するあまり、いろいろな「混ぜ物」されているのに対して、メスカルは純度100%。だから悪酔いしない。度数は43度以上あるが、ゆっくり飲めば翌朝もスッキリ。とても美味しい酒である。
「ラ・クェンタ」で飲むときの作法を伝授しよう。まず入店前に店頭の自販機でチェイサーの水を買おう。そして分からないことは全て、パンチョに聞こう。この店ではツマミはないに等しい。前の写真に出ているメスカルブレッドなどが「お通し」でつくのみ。あとは何でも持ち込みOK!である。
どんなものとも相性のいいメスカル。是非、御自身の舌で確認していただきたい。希望者には港楽亭の「ワンプレート」(写真4枚目)などの出前も出来る。また時折、平日に開催される「ドン・パンチョのテキーラセミナー」に参加して、テキーラやメスカルの薀蓄話をしていれのも楽しい。通常、営業は金・土曜日の夕方から深夜のみ。週末、ラテンな三崎でメヒコ情緒を味わいたい方は是非、おいで下さい。