title_interview
Misaki Fan Interview File#03
インタビュー#03

柳生忠平 小豆島にて妖怪や目に見えないモノを描く妖怪製造装置の技師、もしくは絵描鬼。建具や廃材などにも妖怪を描く。小豆島に生まれ育ち、2005年に絵描鬼宣言を行う。その後は個展を小豆島、京都、大阪、東京で開催している。http://yagyu-chubei.com

杉背よい 幼少より現在までずっと三浦市在住。2009年より「よいこぐま」名義で怪談を書き始める。三浦半島の伝承に興味を持ち、土地の特色に影響を受けた怪談・小説を創作している。共著に「てのひら怪談壬辰」(ポプラ社)、「みちのく怪談コンテスト傑作選2010」(荒蝦夷)。


icon_file02

三崎”怪”対談!! 絵と小説によっていにしえの扉が開かれる
サヌキの妖怪絵描鬼・柳生忠平×ミウラの怪談作家・杉背よい

三崎開港祭のサヌキメイド展で小豆島の妖怪絵描鬼・柳生忠平さんが三崎に来て、妖怪画のライブペインティングをすると聞いたときは驚きを隠せませんでした。偶然にもアプリレーベルonTheHammockでは三浦半島に伝わる伝承を元に怪談小説を創作する杉背よいさんの短編集を電子書籍としてリリースしようと準備していたからです。開港祭は港が開き様々なアートや文化が交差する場となりました。奇しくもサヌキとミウラの”怪”な作家もここで出会うこととなりました。そして絵と小説によって、この土地のいにしえの扉が開かれました。


「ドロっとしたような、ニュルっとしたような。グニャグニャというかボコボコというか」(柳生忠平)


img_02

杉背:私は生まれも育ちも三浦で、あまり他の土地のことは知らないんですけど、最近になって三浦半島に古くから伝わる話を題材にして小説を書くようになったんです。

忠平:僕も妖怪にゆかりのある場所に行って、その土地のことを感じながらスケッチをして、そして絵を描くということをよくしていました。それだけじゃなく、この場所にこんな妖怪がいたら面白いなって妄想したりして描いたりもします。僕は幼い頃から妖怪やもののけの世界が好きでずっとそれを絵に描いていたんです。

杉背:私も幼い頃から幽霊とかに興味があったんです。不思議なものを見たりする経験もあったので、自然と怪談にも興味を持つようになったんです。人のどろどろした部分や心にも興味があって。

忠平:それは僕のなかには無い感覚かもしれない(笑)。

杉背:妖怪を怖いって思ったことはあります?

忠平:怖いと思ったことはあまりないですね(笑)。幼いときに妖怪の絵を見て、うわって思ったことはあります。一番印象に残っているのは地獄絵図を観たときです。あの絵のなかにいる鬼がすごく印象的だった。でも、今はああいう感じの絵がすごく好きなんです。ドロっとしたような、ニュルっとしたような。グニャグニャというかボコボコというか。

杉背:フフフ(笑)。

忠平:まあ気持ち悪いっていうか、食欲なくすなぁっていうものが好きなんです。

杉背:おぉぉ(笑)。

忠平:そういう妖怪が楽しそうに踊ってたり、笑っていたりするのが好きです。

杉背:それ、よけいに怖いじゃないですか(笑)。でも絵を直接観させてもらって、妖怪の表情にどこかユーモラスな感じがしました。

忠平:妖怪って、愛嬌があってどこか憎めない姿で描かれていることが多いですね。あと僕の絵に重要なのは線なんですね。これまで絵を描いてきて、いろんな線を試してきたなかで今のものに辿りつきました。

杉背:インターネットで絵を拝見させてもらったときは、すごくおどろおどろしい感じがしたんですが、でも実際に観ると印象が変わりました。躍動感があって、気持ちが出ている感じがしました。妖怪を見たことはありますか?

忠平:僕は絵で描かれているような妖怪がそのままの姿で実際にいるとは思っていないんですね。ただ目に見えないけど、そういう存在は生活のなかにあるような気がしているんです。上にいるのか、下にいるのかはわからない。でも、近くにはいるんじゃないかって思う。

杉背:妖怪って見守ってくれているようなイメージがあります。子供の感性だと感じることが出来るような純粋なイメージというか。

忠平:かわいそうなところもあるんですよね。例えば、よくない出来事も妖怪のせいにしたら丸くおさまったりする。例えば天井にしみがあったら、それは雨漏りかもしれないけど天井嘗(てんじょうなめ)という妖怪のせいにしたりする。そういう何かのせいにされたりする存在なんです。あと子供を怖がらせることで、躾をしたりしますよね。そういうことに使われる存在でした。

杉背:怪談の世界では、妖怪が登場するような話を怪異譚と言われたりもするんですが、妖怪はやはり人を怖がらせる存在として描かれることが多いですね。


「伝承や歴史を調べていると、私のなかで疑問が浮かぶことがあるんです」(杉背よい)


img_02

杉背:あまり三浦に妖怪の話はないんですが、清伝寺(三浦市南下浦町金田)には「河童の証文」のお話が伝わっています。お寺の近くに「すずの川」というという川があるんですが、ここにいたずらばかりする河童がいたそうなんです。だけど、あるとき村人に捕まえられてしまったんですね。そこで清伝寺の和尚さんが河童に「二度といたずらはしません」という証文を書かせて助けてあげたらしいです。

忠平:そのお寺は、ぜひ行ってみたいですね。僕もこちらの妖怪についていろいろ調べてみました。それで安宅丸という妖怪の話を見つけたんです。これは巨大な軍艦で安宅船というものがあったそうなんですけど、その舟はあまり実用的ではないらしくて使われてなかったんですね。で、船が夜な夜な「伊豆に帰りたい、伊豆に帰りたい」と泣き出して、勝手に動き出してしまったそうです。どうもその船は伊豆の材木で作られたらしく、その木に霊性が宿ったようです。船は三崎で解体されてしまったんですが、それでも解体されたところからは「伊豆へ帰りたい」という声が聞こえてきたそうです。それで、その霊を安宅丸と呼んだそうです。物が妖怪に変化することを憑き物と言いますが、これは船に憑いたわけで日本でも最大級の妖怪ですね。今はここで、安宅丸をどういう妖怪にしようかと考えて描いています。

antakumaru

杉背:釣り鐘が頭にありますね。

忠平:ええ、安宅船は舟に釣り鐘があったらしいんです。あと天守閣があったりした。

杉背:妖怪の絵を描くときって、どういうイメージがまず浮かびますか?

忠平:絵を描いているとはじめはどうしても自分の顔に似てきちゃうんですけど(笑)。

杉背:(笑)。

忠平:この安宅丸は子供みたいな感じなんだけど、ひげが生えています。船の憑き物なのでそこに釣り鐘があったり、天守閣があったりして。すごく巨大な妖怪のイメージなんですけど。逆に僕は小説を書かれる方がどのようなイメージを描かれるのか、その頭の中が気になりますね(笑)。情景が頭のなかにあるんですか?

杉背:イメージはありますね。情景が浮かばないと進んでいかないんです。だから、その情景が浮かぶまでは小説のかけらを集めている感じですね。

忠平:へえ。

杉背:あと伝承や歴史を調べていると、私のなかで疑問が浮かぶことがあるんです。文献で書かれている内容だけではなく、その後どうなったんだろうとか。「占う魚」という作品のモチーフになった「鳳そう魚」(注:江戸時代に浦賀で発見されたと言われる怪魚。外観はエビのようであったが、頭部は猿、顔は馬またはネコに似ており、ヒレは四肢のようであったと伝えられている)は、発見されて見世物小屋に売られたという説もあるし、ずっと生きていたという説もあるし、ぼこぼこにされて捨てられたという説もあるんです。例えば、その鳳そう魚のたどった人生(笑)…を考えていると小説が作られていくんです。

忠平:そういう場合、鳳そう魚はどうなって欲しいのか、そういう希望や想いも入ったりするんですか?

杉背:そうですね。私としてはただ殺されるという存在ではなく、鳳そう魚を見つけた人に何かを残すような存在になればいいなと思いました。

忠平:なるほど。例えば僕の絵だと、この(屏風の)絵にあるのは妖怪製造装置なんです。馬の妖怪を生み出しているんですけど、まだ生みたてなんで形を留めていない。この妖怪製造装置シリーズは他にも顔だけの妖怪を生み出すものがあったり、猿みたいなものを生み出すものがあったりして、この馬の妖怪を生み出す絵は一番新しいものなんです。妖怪製造装置シリーズは、ゆくゆくは巨大なキャンパスにこれを描きたいんです。

杉背:ああ、それは面白いですね。


「口裂け女やトイレの花子さんも100年後には妖怪話になっているかもしれない」(柳生忠平)

「人を経ていくものですよね。怪談も語り継がれていくものだと思います」(杉背よい)


img_02

忠平:僕も文章で表現したりもします。例えば自分の作品を展示するときに、1~2行くらいのお話を付けたりしていた。最近では主人公がどのようなストーリーを辿っていくのかというようなことを考えて書いたりもしています。でも、文章で表現するのは難しいですね。

––どのような話を考えられているんですか?


忠平
:全国で妖怪話を集めている人が主人公なんです。その主人公が小豆島にある迷路のまちに来るんですが、そこには普段は見えないけど芋虫みたいなものが這っているんですね。その虫が出す妖気みたいなものに当てられて、主人公は自分が集めた妖怪話の妖怪が見えるようになるというお話なんです。

杉背:おもしろそう!

忠平:その話に沿った絵の展示をしようとも考えているんです。でも、まだ僕自身もその物語についてはよくわかっていないところがあります。

杉背:私も終わりが見えていて小説を書くときもあるんですけど、この先どうなるんだろうって思いながら書くときもあります。

忠平:怪談って読んでいてもオチがなんとく解ってしまうものもありますよね。でも、それでも怖いって思ったりする。

杉背:自分の身にも何かあるんじゃないかと思ったときに恐怖って感じると思うんです。穏やかだった日常が、ある日突然脅かされるというような瞬間ですね。しかもその理由が何なのかわからなかったりすると怖い。そういう誰にでも起こりそうなことから、日常が変化すると怖さに繫がっていくと思います。

––杉背さんの書かれる小説は怪談でもどこかユーモアがありますね。


杉背
:それはどうしても、そうなっちゃうんです。昔から深刻な話をしていても深刻に聞こえないと言われるんです(笑)。例えば邪悪なことを書こうとしても、どこかしら人間くさいところがあったりする。いろいろ考え方があると思うんですけど、私自身は怪談も怖がらせるだけじゃなくて良いと思っているんです。伝承されている話も、変な終わり方をしていたり、説明がつかないほど理不尽だったりする。でも、その違和感が凄く面白かったりします。

忠平:怪談話とも共通して言えると思うんですけど、妖怪話もうわさ話なんかが元になっていたりしますね。だから、例えば口裂け女やトイレの花子さんも100年後には妖怪話になっているかもしれない。実は水木しげるさんが『妖怪図鑑』のなかで口裂け女やトイレの花子さんを妖怪として描いているんです。僕のなかでは妖怪として扱うにはちょっと早いんじゃないかと思うんですけど。

杉背:まだ新人ですよね(笑)。

忠平:でも100年後とかには妖怪話になっているかもしれないですよね。怪談とかもそうだと思うんですよ。

杉背:そうですね。人を経ていくものですよね。怪談も語り継がれていくものだと思います。

取材場所 ミサキ・シエスタ・サヴォリ・クラブ(昼寝城)
編集・写真 クワムラハルヨシ

img_03

柳生忠平さんは開港祭の開催1週間前から三崎を訪れ昼寝城に滞在し作品作りを行っていた。


kaikosai_arukikata_komugi
三崎開港祭の最終日である9/29、柳生忠平さんが海南神社で妖怪のライブペインティングを行います。10日前から三崎入りしている忠平さんは昼寝城に滞在しながら、妖怪を描き続けています。小豆島の醤油なども使って彩色される絵はいいしれない迫力が漂っています。三崎を守護する海南神社でどのような妖怪が舞い降りるのか。忠平さんの筆先に宿る妖気は見逃せません!9/28と9/29、昼寝城は妖怪城となって忠平さんの作品を展示します。

サヌキメイド展フェイスブックページ https://www.facebook.com/sanukimade


アプリレーベルonTheHammockは2013年10月、電子書籍となる三浦半島怪談集「三浦怪談」をリリースします。同作品はiPhone/iPad用のアプリとしてリリースされる他、Kindleなどで配信される電子書籍としてもリリースします。

三浦半島怪談集「三浦怪談」は三浦半島の伝承を元に、土地の特色に影響を受けた怪談・小説を創作している作家「杉背よい」の短編集となります。1冊には7つの短編が収録されており、浦賀、小松が池、雨崎など実在の土地に伝わる伝承が小説のアイデアとなっています。アプリには小説の元になった伝承を紹介する「怪奇伝承地図」も掲載しています。

また表紙のイラストは2013年に開催された三崎開港祭で、開催期間中に三崎の海南神社で龍の絵をライブペインティングで描いた香川県の妖怪絵師・柳生忠平氏によるものです。三崎で杉背よいと対談し、意気投合したことにより「占う魚」という短編でモチーフとなっている鳳そう魚という怪魚を描いてくれました。

三浦怪談 Icon

三浦半島怪談集 三浦怪談
配信:App Store
価格:iPhoneアプリ = 無料
開発:onTheHammock
発売:10月下旬

三浦怪談


三浦半島怪談集 三浦怪談
配信:Amazon
価格:Kindle電子書籍 = ¥100
出版:onTheHammock
発売:10/12

Kindle版「三浦怪談」はiPhoneやAndroidで無料配布されているKindleアプリやAmazonで販売しているKindle端末で読むことができます。