第4回:海にまつわる不思議なはなし

【MFC連載】三浦怪談・新編 第4回「海にまつわる不思議なはなし」
title_miurakaidan
三浦半島の様々な地域や伝承を元にして、怪談を創作している三浦市在住の作家・杉背よいさんによる短編集「三浦怪談」。昨年の10月にKindle電子書籍/iPhone電子書籍アプリとしてリリースされた同書の新編の連載がミサキファンクラブではじまりました。さて、今回は杉背さんが実際に聞いたという実話か怪談です。三浦の海であることは間違いありませんが、今回は地名を伏せさせて頂きます。

title_story4

第4回「海にまつわる不思議なはなし」
実話のため、今回は地名を伏せさせていただきます
先日私は油壺の胴網海岸へ行きました。


水が澄んでいて美しく、岩場に囲まれたちょうどいい大きさの海水浴場です。目の前には夏季だけ常設営業している素敵な海の家もあります。

冷たい飲み物をいただきながら目の前の海を眺めていたら、海で実際に体験したという怪談のいくつかを聞いてメモしていたことをふと思い出しました。今回はいつもと少し趣向が違いますが、私が聞き集めた海の怪談の中から二つのお話をお送りしたいと思います。

なお、聞いたお話の舞台はすべて三浦の海ですが、あえて名前は伏せておきます。
この夏、もしもどこかで不思議な体験をされたらぜひ教えていただきたいものです。

ひとつめ

昔は静かな海だったんだけどね。だんだん不良のたぐいが夜になると浜に集まるようになっちゃって。駐車場がね、砂浜にダイレクトに行けるし無料でしょ。だから私が若い頃は、夜に砂浜に車停めて、車内でいつまでもおしゃべりするのが楽しかったんだよね。同じような車もいたけど、数はまばらで、車も離して停めて、お互いに干渉しないのがマナーだった。それが今ときたら、砂浜を車で我が物顔でぐるぐる走り回ったりして、うるさくなって残念だよ。

あの夜は久しぶりだった。女房と二人で、何となく海へドライブに行ったんだ。それほど遅い時間じゃなかったから、砂浜にも車は一台しか停まっていなかった。キャンピングカーって言うのかね。ああいう大きな車が一台。乗り手は釣りをしていたのか、海から車に戻ってくる二人の人影が見えた。二人は釣竿やクーラーボックスをトランクに乗せて、車を出した。すると、車が走り去った影に、人がしゃがんでいるのが見えた。

「あれ、あの人たち、連れを置いていっちゃったのかな?」

そう、女房と話していたとき、しゃがんでいた人影がふいに立ち上がった。そして真っ直ぐ我々の車を向いているんだ。
やばい、と思った。何故だか。助手席で女房もそう思ったらしい。
人影がこちらに向かって歩き出すと、影が異常に大きくなった。持ち上げた手と足がめくれあがるようにゆっくり動く。夢中で車を急発進させた。どうしてもあの人影の付近を通らなければ出口へ行けないのだが仕方がないと思った。

だけど、人影に向かって進んだはずが、人影はどこにもなかった。

あの、人影の動きを思い出すとぞっとしたよ。
そのままもちろん、我々は慌てて家に帰った。

やっぱりあの海にはもう行けないね、と残念だがそう話しているんだ。

ふたつめ

私は薬を売る営業をしています。すでに契約を結んで薬を買ってくれているお客さんの家を回って、商品のメンテナンスをしたり、新規のお客様を開拓したり、まあ日々そんな感じです。

お客さんからあの海の怖い話を聞いて、何だかいやあな気がしたんです。と言うのも、お客さんのエリアを回った後、私は大体休憩のためにその海岸のトイレを借りるんですよ。そのまま駐車場で今日の売り上げをチェックしたり、進捗をデータにまとめるちょっとした作業をしたりして便利に使っていたんです。
確かに夕方から夜になると、人気もまったくなくなってちょっと寂しい気がしますよね。

そうそう、この前こんなことがありました。

海岸の近くに住むお得意様の一人と、海で打ち合わせをすることになったんです。何でわざわざ海で、って感じなんですけどお客様の家の近くだし、散歩方々出てこられるというし、まあいいかと思ったんです。
二人で少し砂浜を歩いて、岩場のかげみたいなところに腰かけて仕事の話を始めました。すると、

「ボーン」

どこからともなく音がするんです。
私だけではなく、お客さんにも音は聞こえたみたいで思わず顔を見合わせました。

「ボーン」「ボーン」

柱時計の音……?
昔の、じいさんの家にあるような古い柱時計が時を知らせる音に違いありませんでした。
でも、ここは海ですし、時計の音が聞こえてくるほど近くに家はありません。
もちろん時計自体があるはずもなく……。
私とお客さんは気味が悪いながらも打ち合わせを進めていたのですが、

「ボーン」「ボーン」「ボーン」

いつまでも時計の音は止まず、それどころか速くなっていっている気すらしました。
私たちはいよいよ怖くなって、話もそこそこにその場で別れました。

今でも何だったのかよくわからないんですけど、お客さんからあの海岸での不思議な話を聞くとなるほどなあと思いましたね。

あそこにはきっと、何かがあるんですね。

 

【杉背よいプロフィール】
幼少より三浦市在住。2009年より「よいこぐま」名義で怪談を書き始める。三浦半島の伝承に興味を持ち、土地 の特色に影響を受けた怪談・小説を創作している。共著に「てのひら怪談壬辰」(ポプラ社)、「みちのく怪談コンテスト傑作選 2010」(荒蝦夷)。他に児童書「まじかる☆ホロスコープ こちら、天文部キューピッド係!」(角川つばさ文庫)。


◆三浦怪談について◆

「三浦怪談」は、iPhoneアプリやKindle電子書籍でもリリースされています。iPhoneアプリ版では、GPSを使って、怪談のモチーフとなった伝承話の土地へ近づくと通知します。アプリ版「三浦怪談」を元に、お話に出てくる場所を訪れてみるのも楽しいですよ。
三浦怪談_大蛇伝説


三浦怪談 Icon
三浦半島怪談集 三浦怪談
配信:App Store
価格:iPhoneアプリ = 無料
開発:onTheHammock
発売:2013年10月下旬

三浦怪談



三浦半島怪談集 三浦怪談
配信:Amazon
価格:Kindle電子書籍 = ¥100
出版:onTheHammock
発売:2013/10/12

Kindle版「三浦怪談」はiPhoneやAndroidで無料配布されているKindleアプリやKindle端末で読むことができます。


★スマートフォンやタブレット端末をお持ちでない方も、パソコンでKindle電子書籍が読めます。Kindle電子書籍をPCで読む方法(Windows・Mac対応)は、下記をクリックして参考にしてみて下さい!

Kindle電子書籍をPCで読んでみよう!

 

banner_story4