第26回:「山にまつわる不思議な話」(神奈川県内の山)

三浦怪談・新編:第26回 「山にまつわる不思議な話」 (神奈川県内の山)
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三浦半島の様々な地域や伝承を元にして、怪談を創作している三浦市在住の作家・杉背よいさんによる短編集「三浦怪談」。昨年の2013年10月にKindle電子書籍/iPhone電子書籍アプリとしてリリースされた同書の新編の連載がミサキファンクラブではじまりました。

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第26回:「山にまつわる不思議な話」
(神奈川県内の山)


蒸し暑い季節がいよいよ近づいて参りました。
今月は何を書こうか、と考え、夏にふさわしく実体験した不思議な話をまた書いてみてはどうかと思いつきました。2014年の夏に、海にまつわる不思議な話を掲載していただきましたが、今回は山にまつわる少し不思議な話です。


例によって、実体験のため具体的な地名は伏せてあります。今回は三浦半島を飛び出し、神奈川県内のとある山、とだけ言わせていただきます。この夏も、どんな不思議な経験ができることやら。



◼︎ ひとつめ


ちょうど六月の、今ぐらいの季節でしたか。私は夫と二人でドライブに出かけました。まだ結婚前だったので、五年ほど前だったと記憶しています。夫は温泉好きです。昼間は付近の観光地などを巡り、帰りにその土地の日帰り温泉施設に寄って、汗を流して帰るというのが外出のパターンでもありました。
お風呂から上がって一休みすると、帰りの時間は大体夜の七時を過ぎます。帰り道は真っ暗な山道をドライブということもままありました。


「あれ……?」


帰り道、運転しながら夫が首を傾げているのですが、まあ仔細は訊ねまいと思っているとどんどん山の細い道を入っていきます。


──これは道に迷っているのでは。


そう思いましたが、落ち葉に埋もれた獣道に小さな稲荷神社が建っているのを見て覚悟を決めました。
助手席で文句を言って、山道に捨て置かれたりしたら一大事です。
もう行けるところまで行けばいいや。何か面白いことがあるかもしれないし。
やがて、道の突き当りに辿り着いたのですがそこは数年前に閉館されたと思しき保養施設でした。辺りに人影はなく、暗闇の中にカーテンの破れた保養施設が浮かび上がっていました。


「どうする、降りて散歩してみる?」


夫はとんでもない提案をしましたが、私は「降りたくない」と言いました。
真っ暗な保養施設の前に白いシャツを着た男の人が立っていることに突然気付いたからです。
その人は何もせず、妙にゆっくりした動きで保養施設の前を往復していたので、夫も状況を察して車を発進させました。往復、と言いましたが男の人の顔は見えず、後姿のまま、前後にゆっくり歩いているのです。ゆっくり前に進んだり、後退したり。
私たちから見れば、背中だけがゆらゆらと移動しているようなもの。


──入るに入れないのだろうか。


そう思いましたが、もう立ち去ったほうがいいと思いました。
車のライトが一瞬男の人の白いシャツを照らしましたが、やはり男の人は背中をこちらに向けているままでした。


背中は丸まっていた、と気付いたのはずいぶん時間が経ってからです。

—————-

◼︎ ふたつめ


車を買い替えるに当たり、私たち夫妻は売りに出される車と「さようならドライブ」を何度かしました。無事に十数年事故もなく乗り終え、ありがとうとお礼を言ってさよならをしたのですが、そのさようならドライブのうちの一回は思い出深いドライブとなりました。


またもや例によって日帰り温泉施設から帰ろうとした私たちは、カーナビの指示に従って進んでいくのですが、何故か目的地とはまったく関係のないホテルの前に辿り着いてしまいました。時間は夜。街灯もない山道です。もちろん周囲に歩いている人はいません。


「このカーナビ古いからね」


そんな風に笑いながら、別ルートを探索するのですがまた違う道を通ってホテルの前に辿り着いてしまいます。ホテルの目の前は、既に運行時間を終了したロープウェイの駅がありました。最初は笑っていられたのですが、三度、四度と違う道を通りながらホテルの前に出る頃には何だか気味が悪くなってきました。
そのうちに、カーステレオから流れる音楽も、ラジオでもないのに途切れ途切れになってきます。


「あ……じ……こ……」


ぶつ切れになったボーカルの絶叫を聞いていると、眩暈がしてきました。


──これ、ここから出られなかったりして。


ぞっとしながらカーナビを覗き込むと、地名には「地獄」という文字が。私たちはその周りを何度もぐるぐるとさまよっていたのです。


結局、夫がカーナビを無視して小さな看板を見つけて下道を発見。無事に家へ帰ることができたのですが、「さようならドライブ」を終えたくなくて車が私たちを引き留めようとしたのかと思ってしまいました。
いやいや、あの可愛い車に限ってそんなことはありませんが。



以上が、主に温泉帰りの山道のドライブで体験した少しだけ不思議な話です。海に山に、夏のお出かけで不思議な体験をされた方はぜひお話を聞かせてください。

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三浦市在住の小説家 杉背よいさんが連載する「三浦怪談・新編」の企画として、三浦半島の「都市伝説、怪奇話、不思議な伝承」などを募集します。お寄せ頂いた「伝承」や「ロケーション」などを元に、杉背さんが怪談を創作します。ぜひ、三浦半島の不思議な話をメールフォームにてお送りください!

※ ご応募いただいた全ての情報が、怪談話に採用されるとは限りません。ご了承ください。


 

【杉背よいプロフィール】
幼少より三浦市在住。2009年より「よいこぐま」名義で怪談を書き始める。三浦半島の伝承に興味を持ち、土地 の特色に影響を受けた怪談・小説を創作している。共著に「てのひら怪談壬辰」(ポプラ社)、「みちのく怪談コンテスト傑作選 2010」(荒蝦夷)。他に児童書「まじかる☆ホロスコープ こちら、天文部キューピッド係!」(角川つばさ文庫)。


◆三浦怪談について◆

「三浦怪談」は、iPhoneアプリやKindle電子書籍でもリリースされています。iPhoneアプリ版では、GPSを使って、怪談のモチーフとなった伝承話の土地へ近づくと通知します。アプリ版「三浦怪談」を元に、お話に出てくる場所を訪れてみるのも楽しいですよ。
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三浦半島怪談集 三浦怪談
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Kindle版「三浦怪談」はiPhoneやAndroidで無料配布されているKindleアプリやKindle端末で読むことができます。


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